韓国文化

韓国のキャッシュレス社会 — 現金なしで暮らす日常

韓国は現金なしでほぼすべての日常生活が可能なキャッシュレス社会。カカオペイやトスなどの決済サービスから日常風景まで、韓国在住者の視点でリアルに紹介します。

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韓国のキャッシュレス社会

韓国に旅行で来た日本人の友人にこう言われたことがあります。「財布に現金を入れてきたのに、使う場所がなくてそのまま持ち帰った。」冗談のように聞こえるかもしれませんが、韓国で生活していると本当に実感します。韓国は現金がなくてもほぼすべての日常生活が可能なキャッシュレス社会になりました。

日本でもPayPayやSuicaなどキャッシュレス決済が普及してきていますが、韓国の状況はもう少し違うレベルにあります。今日は韓国で実際に暮らしながら感じるキャッシュレス社会の姿を紹介してみたいと思います。


財布がいらない国

韓国で暮らしていて最初に感じるのは、スマートフォン一つで一日が完結するということです。

朝、家の近くのコンビニでコーヒーを買うとき。昼、食堂でご飯を食べるとき。夜、スーパーで買い物をするとき。全部スマートフォンで決済します。町の小さな軽食店や屋台でもカード決済やモバイル決済ができます。むしろ現金を出すとお釣りがなくて困るお店があるほどです。

韓国銀行の統計によると、韓国の現金使用比率は全体決済の10%以下にまで下がっています。コンビニで50円程度のお菓子一つ買うのにもカードを使うのが当たり前の文化になっているんです。


韓国のキャッシュレスを支える三つの柱

韓国のキャッシュレス社会は、大きく三つの柱で成り立っています。

1. クレジットカード・デビットカード文化

韓国のキャッシュレスの歴史は、実はスマートフォンよりずっと前に遡ります。1990年代後半から政府がクレジットカードの利用を積極的に奨励し、カード利用額に対して所得控除の優遇措置を設けました。お店側にとってもカード売上が透明に把握できるため、税務管理に有利でした。

その結果、韓国は世界でも一人当たりのクレジットカード保有数が最も多い国の一つになりました。日本ではまだ「現金のみ」というお店を見かけることがありますが、韓国では逆に「カードのみ」というお店が登場しているほどです。

2. 簡単決済アプリの爆発的普及

クレジットカード文化の上にスマートフォン簡単決済が加わり、韓国のキャッシュレスはさらに一段階進化しました。代表的なサービスを紹介します。

カカオペイ(KakaoPay) — 韓国の国民的メッセンジャーアプリ「カカオトーク」に内蔵された決済サービスです。韓国でカカオトークを使っていない人はほぼいないため、別のアプリをインストールしなくてもすぐに使えるのが強みです。友人への送金もカカオトークのチャット画面からそのまま送れるので、「ご飯代送って」という一言と同時に数秒で送金が完了します。

トス(Toss) — もともと簡単送金サービスとしてスタートしましたが、今は銀行(トスバンク)、証券、保険まで備えた総合金融プラットフォームに成長しました。すっきりしたUIと直感的な操作性で、特に20〜30代に人気があります。口座残高の確認から株取引、信用スコアの照会まで、一つのアプリであらゆる金融業務を処理できます。

ネイバーペイ(Naver Pay) — 日本でいうYahoo!のようなポータルサイト「ネイバー」が運営する決済サービスです。ネイバーショッピングでの買い物だけでなく、オフライン店舗でも利用可能。ネイバーポイントが貯まるため、ネイバーのエコシステムをよく使う人に有利です。

サムスンペイ(Samsung Pay) — サムスンのスマートフォンに内蔵された決済サービスですが、他の簡単決済とは違う特別な点があります。従来のカード決済端末でもそのまま使えるということです。つまり、お店にQRコードやNFCリーダーがなくても、普通のカードリーダーさえあればスマートフォンをかざして決済できます。このため韓国でのサムスンペイの決済可能範囲は、事実上カードが使える場所ならどこでもOKです。

3. モバイルバンキングの進化

韓国のモバイルバンキングは、単なる残高照会や振込を超えています。カカオバンクやトスバンクといったインターネット専業銀行は、物理的な店舗を持たずスマートフォンアプリだけで運営されています。口座開設から融資の申し込み、海外送金まで、銀行に一度も行かずにアプリで処理できます。

特にカカオバンクはリリース直後に爆発的な人気を集めました。従来の銀行の複雑な手続きなしに、数分で口座が作れるという手軽さが大きな魅力でした。今では韓国の成人のかなりの割合がカカオバンクの口座を一つは持っているほど、日常に定着しています。


日常のキャッシュレス風景

韓国のキャッシュレスがどの程度なのか、実際の生活での様子をもう少し具体的に紹介してみます。

交通 — 地下鉄やバスなどの公共交通はT-moneyという交通カードで乗車しますが、今ではスマートフォンのNFC機能でも乗車できます。タクシーもカカオタクシーアプリで呼べば、降車時に自動で決済されるので、別途お金を出す必要がありません。

デリバリー — 韓国は世界的にもデリバリー文化が発達した国です。「ペダルの民族(配達の民族)」や「クーパンイーツ」といったアプリで料理を注文すると、注文と同時にアプリ内で決済が完了します。配達員に現金を渡すことはありません。

伝統市場 — 「市場では現金が必要では?」と思われるかもしれませんが、韓国政府が伝統市場にもカード決済端末や「ゼロペイ(Zero Pay)」というQR決済システムを普及させたことで、市場の商人たちもキャッシュレスに参加するようになっています。もちろんまだ現金を好むお店もありますが、年々減少傾向です。

割り勘 — 日本では食事の後、レジの前でそれぞれ現金を出す文化がありますよね。韓国では一人がカードで全額を決済した後、残りの人がカカオペイやトスで自分の分をすぐ送金するのが一般的です。この過程がチャットアプリの中で数秒で終わるため、現金を合わせるのに苦労することがありません。


日本との違い、どこから来るのか

日本もキャッシュレス比率が上がっていますが、体感的にはまだ韓国との差があります。その理由を考えてみると、いくつか思い当たることがあります。

決済手段の統一性。 日本はPayPay、楽天ペイ、d払い、Suica、PASMOなど決済手段が多すぎて、お店ごとに「これは使えてあれは使えない」という状況が生まれます。韓国はクレジットカードがほぼどこでも通用し、簡単決済もカカオペイとネイバーペイの二つが主要市場を占めているため、混乱が少ないです。

政府の積極的な政策。 韓国政府は1990年代からカード利用促進策を展開し、カード利用額に対して税控除の優遇を与えました。こうしたインセンティブが消費者と加盟店の双方を動かすのに大きな役割を果たしました。

現金に対する意識。 日本には現金を大切に扱う文化的伝統があり、「現金が一番確実だ」という意識がまだ根強くあります。韓国では現金を持ち歩くことがむしろ不便だという意識の方が優勢になりました。


キャッシュレスの影の部分

もちろん良い面ばかりではありません。

デジタル機器に慣れていない高齢者の方々は、キャッシュレス環境で取り残されやすくなります。韓国でもこの問題は社会的課題となっており、政府や自治体が高齢者向けのデジタル教育プログラムを運営しています。またスマートフォンのバッテリーが切れると決済そのものができなくなるリスクもあります。私も外出時にはモバイルバッテリーを必ず持ち歩くようにしています。

個人情報保護への懸念もあります。すべての取引がデジタルで記録されるため、消費パターンがそのままデータとして残ります。便利さとプライバシーのバランスは、キャッシュレス社会が引き続き向き合うべき課題です。


まとめ

韓国で暮らしていて、最後に現金を使ったのがいつだったか思い出そうとすると、正直よく覚えていません。それほどキャッシュレスが日常の奥深くまで浸透しています。

日本でもキャッシュレスの流れは確実に進んでいます。韓国の事例が日本の未来をそのまま示しているわけではありませんが、「現金のない生活が実際にどんなものか」の参考になれば嬉しいです。

もし韓国旅行を計画している方がいれば、一つだけアドバイスを。現金は最小限にして、代わりにVISAかMastercardが付いたカードを一枚持っていってください。それだけで韓国での日常は十分にこなせます。

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