舞台「千と千尋の神隠し」ソウル公演を観てきました ― 中学生時代の思い出が蘇る感動の舞台化
皆さん、こんにちは。
先日、韓国ソウルの芸術の殿堂オペラハウスで上演中の舞台「千と千尋の神隠し」を観劇してきました。
2001年7月20日に公開された映画「千と千尋の神隠し」。私にとってこの作品は、中学生時代の大切な思い出の一つです。当時、映画館で初めてこの作品を観た時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。あれから20年以上の歳月が流れ、まさかその作品が舞台化され、しかも韓国で観られるとは夢にも思いませんでした。
今回はその感動的な観劇体験を皆さんにお伝えしたいと思います。

舞台「千と千尋の神隠し」とは
舞台「千と千尋の神隠し」は、2022年3月に東宝創立90周年記念作品として東京の帝国劇場で世界初演を迎えました。演出・脚色を担当したのは、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の演出で知られるイギリスの名匠ジョン・ケアード氏。トニー賞受賞の実績を持つ彼が、宮崎駿監督の傑作アニメーションをどう舞台化するのか、世界中のジブリファンが注目していました。
2024年にはロンドン・コロシアムで135回公演のロングランを成功させ、約2300席を毎日満席にして30万人以上を動員。日本人キャストによる日本語海外公演としては演劇史上最大規模となりました。
そして2025年には中国上海公演を経て、2026年1月から3月まで、ここ韓国ソウルの芸術の殿堂オペラハウスで上演されています。
芸術の殿堂オペラハウスという特別な空間
今回の公演会場である芸術の殿堂は、ソウル市瑞草区に位置する韓国を代表する複合文化芸術施設です。7つの劇場と3つの美術館・博物館が集まったこの施設の中でも、2283席を擁するオペラハウスは韓国最大級の舞台芸術空間として知られています。
会場に足を踏み入れた瞬間から、特別な体験が始まることを予感させる荘厳な雰囲気がありました。開演前のロビーでは、日本からわざわざ観劇に来たファンの姿も多く見られ、この作品への期待の高さが伝わってきました。
圧巻のクオリティ ― アニメーションが目の前で蘇る
正直に申し上げると、観劇前には若干の不安もありました。
あの幻想的な世界観、異形の神々、空を飛ぶシーン、カオナシの奇妙な存在感…。CGさえ使わず、生身の人間がどうやってあの世界を再現できるのだろうかと。
しかし、その不安は開演直後に吹き飛びました。
タイトルロゴから始まる魔法
オープニングで「千と千尋の神隠し」のタイトルが映し出され、「千」という漢字2つが残ってそれが鳥居に変形する演出。この瞬間から私は完全にジブリの世界に引き込まれました。
パペットと黒子が生み出す独創的な表現
この舞台の最大の特徴は、あえて「アナログ」にこだわった演出です。
釜爺の6本の腕は黒子たちが巧みに操り、まるで本当に6本の腕があるかのように動きます。白竜に変身したハクと千尋が空を飛ぶシーンでは、俳優たちの身体表現と照明、そして黒子の連携によって、確かに彼らが空を飛んでいるように見えます。
タネも仕掛けも見えるのに、それが全く世界観を損なわない。 むしろ人の手によって魔法が作られる様子を見ることで、より深い感動が生まれる。これこそ舞台芸術の真髄だと実感しました。
オクサレサマの変身シーン
特に印象的だったのは、オクサレサマ(腐れ神)が河の神に戻るシーンです。映画でも名場面として知られるこのシーンが舞台上でどう表現されるのか興味津々でしたが、見事な演出で会場全体から感嘆の声が漏れました。汚れた姿から美しい河の神へと変貌していく様は、まるで目の前で魔法を見ているようでした。
カオナシの存在感
カオナシが暴走してどんどん大きくなっていくシーンも、舞台ならではの工夫が光っていました。映画では当たり前のように描かれていたものが、人の手と工夫によって再現される様子は新鮮な驚きに満ちていました。

久石譲の音楽を生演奏で聴く贅沢
この舞台のもう一つの大きな魅力は、久石譲氏のオリジナルスコアを生演奏で聴けるということです。
映画で何度も聴いた馴染みの旋律が、ライブオーケストラによって演奏されます。その音楽が舞台上の演技と完璧にシンクして、感動を何倍にも増幅してくれました。
あの印象的なメロディが流れ出した瞬間、中学生の頃映画館で感じた胸の高鳴りが蘇り、思わず目頭が熱くなりました。
キャストの素晴らしさ
千尋役の上白石萌音さん、川栄李奈さんをはじめ、ハク役、湯婆婆/銭婆役の夏木マリさんなど豪華キャストが揃っています。
特筆すべきは、皆の演技が原作の声に対する違和感がほとんどないことです。立っているだけでも小学生に見える佇まい、歩き方、表情…。大人が10歳の少女を演じるという難題を見事にクリアしていました。
リン役の咲妃みゆさんや花風みなさんの男勝りで凛々しい演技も、映画のリンそのもの。釜爺役の橋本さとしさんの演技も深みがあり、舞台オリジナルの魅力を加えていました。
湯婆婆を演じる夏木マリさんは、映画版でも声優を担当された方。舞台でも圧倒的な存在感であの独特の雰囲気を完璧に再現していました。「千と千尋の神隠し」に欠かせない存在だと改めて実感しました。
韓国の観客の反応
初のソウル公演ということで、韓国の観客がどんな反応を示すか気になっていました。
会場は約2000席が満席。若い観客層が多く、各シーンでリアクションが大きいのが印象的でした。感動的なシーンでは会場全体が静かに沈み、コミカルなシーンでは笑い声が響き渡りました。カーテンコールではスタンディングオベーションで迎えられ、言語の壁を超えて作品の魅力が伝わっていることを実感しました。
日本語上演にもかかわらず、字幕を通じてストーリーを追いながら目の前で繰り広げられるパフォーマンスに引き込まれている様子が伝わってきました。宮崎駿監督の作品が持つ普遍的な魅力、そして舞台芸術の力を改めて感じた瞬間でした。
中学生の頃の自分に伝えたいこと
2001年7月20日。映画「千と千尋の神隠し」が公開された日、私は中学生でした。
当時この映画は社会現象となり、興行収入316億円という驚異的な記録を打ち立てました。ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、アカデミー賞長編アニメーション映画賞を獲得した初の日本映画となりました。
あの頃の私は、まさかこの作品が舞台化されて、20年以上経った今、韓国で観ることになるとは想像もできなかったでしょう。
千尋と同じように、私たちも毎日未知の世界に飛び込み、困難に立ち向かいながら成長していきます。この作品が時代を超えて愛される理由は、そんな普遍的なテーマが込められているからだと思います。
最後に ― これは「実写化」ではなく「舞台化」
最後に強調したいのは、この舞台は単なる「実写化」ではないということです。
映画をそのまま再現しようとするのではなく、舞台という表現形式の特性を最大限に活かしながら「千と千尋の神隠し」の世界観を新しい形で表現しています。だからこそ、映画を何度も観たファンも新鮮な感動を味わえるのです。
舞台装置、照明、音響、パペット、そして何より俳優たちの演技。すべてが一つになって、私たちを不思議の町へと導いてくれます。
公演情報
ソウル公演は2026年3月22日まで続きます。
日本からも近い韓国、美味しいものも食べがてら、ぜひこの特別な体験をしに来てください。きっとあの頃の自分に会えるはずです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 公演期間 | 2026年1月7日〜3月22日 |
| 会場 | 芸術の殿堂オペラハウス(ソウル) |
| 上演時間 | 約3時間(休憩含む) |
| 言語 | 日本語上演、韓国語字幕 |